天国

天国のパフォーマンス。今回はじめて、代表曲であるさっちゃん三部作を聴きました。すげ〜。
ぼくは彼らを形容する言葉をほとんど持っていない。
けれど、ぼくは彼らを全面的に肯定している。天国の音楽を聴いて、首を縦に振らない人なんてきっといないだろう。
それは彼らが究極だからだ。
個性的という意味ではない。もちろんクロスオーバーしていると言いたいわけでもない。
彼らは音楽性などというネイチャーの問題を徹底的に退けて、彼らにしか表現できないことを、淡々とこなしている。
ピアノの本間くんは、これは全部コラージュだから、と嘯く。
「ここはプロコで、ここはライヒだよ。」とニヒルに笑う。
けれど、彼は知っているのだ。そのキャンパスに宮国英治の筆が走ったとき、
鮮烈なオリジナリティが生まれることを。
もっとも重要なのは、自らがサンプリング行為の囚人であることに自覚を持っていることなのだ。
そうでなければ、あのようなオリジナルの音を作り出せるわけがない。
彼らは憂鬱な時代のアーティストにあって、凡百の表現者から一線を画すユニットである。

だいたい、プロコとライヒを自在にコラージュして、その色彩を保持できる技術と表現力のあるピアニストが、日本にどれだけいるだろう。
そしてその厚みと重力に圧倒されることなく、多様な手札と淫靡な声をもって、その音楽を溶解し、再構築することのできるボーカリストなど他には思いつかない。
彼ら二人が出会ったこと自体、僥倖という他はないのだ。
天国はひとつの稀有な音楽というよりは、ひとつの出来事だと思う。

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