石川丘子

石川丘子さんの写真は素敵だ。
彼女の撮る山々や湖の写真は色気に満ちている。
彼女には艶やかな山や、蠱惑的な湖を見つけだす能力が備わっているのだろうか。
ぼくはそうではないと思う。きっと山の本来持っている色気を彼女だけが感じ、すくい取り出しているのだろう。
丁度、夏目漱石夢十夜」の第六夜で、木のなかに埋まっている仁王を掘り出すように。
そう思ったのは、彼女の版画作品を見てからだ。余分な力の篭っていない涼やかな版画群は、距離が美しくて清い。
無造作に鑿と槌を振るう明治の運慶と、流行から遠く離れたところで淡々と作品を作る彼女を同じ文脈で語るのは暴挙だろうか。孤高、と言ったら本人は怒るだろうけど。
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