さっとハッピーになって、ゆるやかに死ぬ


ぼくは細いものが好きみたいだ。
むかしからジャコメッティは好きだったし、タイポグラフィもlightなものが好きだ。
Linotypeのユニバースとか、avenirとかほんと綺麗だと思う。

むかし、京都の恵文社で針金で出来たしおりを見つけて買ったんだけど、なくしてしまった。
ああ、この作家、ジャコメッティみたいだなと思った。
関昌生さんという人のプロダクト。
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でも、わりに女の子は細くなくていい。
たぶん、線は女性性に背馳するのだろう。
たぶんね。



明るいトピックが思いつかないので
そろそろ、大所帯で南欧辺り、フランスとかベルギーとか行こうよ。みんなで。
おれ英語も仏語もできないけど。

演奏するひとは演奏しに、
各々違う目的でさ。
広くて清潔なフラット借りて。
燃油代が安いうちに。

みんな時間ないんだろうけど、
「時間がとれない」という理由ほどパセティックなものはないと思うよ。
まったく完全に、隙がなく、正当で、それでいて死ぬまで続くから。
だからひとは、渋々時間をみつけては、さっとハッピーになり、
そしてゆるやかに死んでいく。



ある劇団に客演としてJessicaが参加し、声を聴いた演出家の人が
「彼女の声を聴くと、映像がぽんと出現する、時計とか、ドアとか。」と言った。
そうなんだよ、すごく物質的なの。なんというか、声と、空気が倍音によって限定した形になる。彼女の声は。
そう、ぽんっという感じで。

これは努力でどうこうなるものじゃないし、ヴォイス・トレーニングによって涵養される歌唱力とも無関係の資質だ。
(Jessica自身は、恐ろしいほどに練習するけど・・・)
完全に生得的なもの、生まれつきの能力だと思う。
そういえば、玉井夕海さんも「声を聴いた瞬間、空気を一篇の映画にしてしまう」と評していたっけ。
しかし、時計とかドアとか言い得て妙、完全に「不思議の国のアリス」である。

その演出家は、続けてこうも言っていた。
「Jessicaの声は、個だと思う。個、一、単一、空があったらその下で対になるもの、ひとつの凛としたモノ、
そんな気がする。」

その通り。

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その劇団の公演は、以下です。そのJessicaはシューマンのLiederkreis歌います。
ぼくも一曲書き下ろしました。

3/29,30
開座アトリエ公演
18:00〜
Ticket 2,500yen