カメレオン


ぼくはドンキホーテが嫌いだ。
商品の陳列の仕方や、店員の接客態度、BGMまで、すべてが癇に障る。
しかし、なんと言っても不快なのは、店に来ている買い物客だ。ドンキホーテに集う買い物客が一様に醜悪で、下品に見えるのは何故だろう。イタリアのブランドショップに並ぶ日本人観光客にだって、うすっぺらくはあるけれど、確信に満ちた表情があるのに
彼らには、 それがない。
ドンキホーテに通う知人の話だと、具体的に何を買うという目的を持たず店に入るのだそうだ。安くて、在庫数が多くて、手軽に色々な種類の品物を物色することができるマーケット。ドンキホーテに買物に来ている人々に似ている。
(あとブックオフにも似ている。)
帰り道、渋谷のドンキホーテに入り、悪戦苦闘して午後の紅茶を買った。病の味がした。



ぼくは六本木が比較的、嫌いだ。
即物的な建物の数々、けばけばしいネオンサイン、歩道を塞いで呼び込みをする外国人と醜い女。
まぁ、全部どこにでもあるものだけど。

ぼくは路地を抜けた小さなバーに入ってカウンターに座った。隣の席には、日焼けをしたやたら筋肉質の男と、肌に全くつやのない、カメレオンそっくりの女が寄り添って座っている。男は女の顔を覗き込むようにして話をしている。
援助交際辞めたら、失業保険って貰える?」
「まじだ!?それ美味しいな!」

ぼくは男を蹴り殺してから、カメレオンに、「あんた一回の援助で、洗濯用洗剤とか、星の砂とか、砂金とか、ブックカバーとかしか貰ってないんだろ?それだけの給与で、国にいったいどれだけのものを請求するわけ?バカ?」と尋ねようと思ったけれど、西の空に死兆星が見えたので、やめた。

暗澹たる気分で打ち合わせを終わらせ、日比谷線に乗った。六本木から終電に乗り込んだ人々は、皆、さっきの女のような色をしていた。

f:id:monobook:20090822161058j:image


ルーブル美術館展@横浜美術館
よく覚えていない。